末近浩太

イスラーム主義者たちは、独裁政治によって混迷する社会や国家を造り直すための「代替案」を提示しようとしたのである。イスラームに全幅の信頼を置きながらも、西洋的近代化の方法や成果を取り入れ、過去よりも未来、破壊よりも建設を目指した。だからこそ、多くの人びとの支持を得ることができたのである。 このイスラーム主義者たちの挑戦が実を結んだのが、1979年に起こったイラン革命であった。イスラーム法学者ホメイニーを指導者とする革命勢力は、親米の独裁王政を打倒し、イスラームの教えに基づく新たな国家の建設に成功した。 イラン革命は、政治と宗教を再び結びつけようとする前近代的な復古主義の試みと捉えられてきたが、革命後に樹立された「イスラーム共和制」は、実に先進的なものであった。それは、文字通り、イスラーム法による統治と18世紀の米国やフランスに生まれた共和制を融合する試みであった。